シリコンバレーでエンジニアとして働くことに興味があるが、どれくらいのレベルが要求されるのか、どのようなルートで働けるのか、知りたい。
この記事では上記ような疑問に答えます。
本記事の内容
- シリコンバレーでエンジニアとして働く際に要求されるレベルとは
- シリコンバレーエンジニア参考例
- シリコンバレーでエンジニアとして働く3つのルート
- シリコンバレーでエンジニアになるためのお勧めのルート
- シリコンバレーでエンジニアをめざす上でのリスク
- 実際にやってみた→シリコンバレーでエンジニアになれた
記事を書いている私(@EngineerLifeOrg )は、日系メーカーでエンジニア職を5年経験したのち退職、私費にてMBA留学。留学中にGAFAでのインターンを経験。MBA卒業後はアメリカのGAFA本社でエンジニア。
この記事では新卒から経験5年未満ぐらいの若手エンジニアを想定しています。
シリコンバレーでエンジニアとして働く際に要求されるレベル
1. 知識
社内を見渡してみると知識面に関しては、その分野のことをある程度知っているレベルから業界で名が知られているレベルまで幅広くいます。新卒から、経験数年レベルのエンジニアに最低限要求されるのは、少なくとも大学、大学院で習う基本的な内容はしっかりと理解できている、という感じでしょうか。
入社時に網羅的に全て知っている必要はありません。私の周りのエンジニアもその専門分野をよく知っているのですが、基本的なことを説明できなかったりすることもたまにあります。
知識面に関してはその分野を網羅的に知っているというよりも、知らないことがあっても調べれば理解できる、もしくは先輩エンジニアに説明されればすぐにわかる、というように基礎がしっかりできれば問題ないかと思います。
逆に基本的な大学レベルのことが理解できていないと説明されても理解できなかったり、独学するにも時間がかかりすぎたりと、困ることになると思います。
2. 経験
新卒であれ、経験数年のエンジニアであれ、直近5年ぐらいの間にそれなりに人に説明できる成果が欲しいです。ただ、とんでもなくすごい経歴が必要がというとそんなことはありません。
その業界で、3~10人ぐらいのプロジェクトをリードして製品化につなげたことがある、というようなレベルで問題ないのではないでしょうか。例えば参考としては以下のような感じです。
- 製品開発なら、1~3年かけて自社製品のあるコンポーネントの開発をリードして発売までつなげた。
- 技術開発なら、3~5年かけてある分野の技術開発をリードして、自社製品への採用までつなげた。
- 特許を数本申請し、幾つかは登録された。
- 学生であれば基礎研究分野でファーストもしくはセカンドオーサーで論文を執筆し、掲載された。
3. 地頭
地頭の良さを言葉で表現するのは難しいですね。よければ良いほど良いですが、世の中に出回っているGoogleの入社試験、Appleの入社試験と言ったパズルのような問題を必ずしも簡単に解けるレベルではなくても良いです。
周りの人たちを見てもそんな奇抜なアイデアがすぐに浮かぶという感じの人ばかりではないです。むしろ基本的なエンジニアリングの知識と理解、ロジカルな思考が要求されるような気がしています。
例えば、製品開発の過程で製造上の問題が発生した際には、アイディアがどんどん出せる、ということよりも、問題を整理し、次のアクションを示し、それをチーム内に正確に伝えられる、ということが大事です。
4. 意欲
メンバーの意欲はとても高いです。自社製品に関われることをとても誇りに感じていて、なんとかして良いものを作ろうとしています。働き方は各自自由なのですが、深夜遅く、もしくは早朝、また週末関係なくメールが飛んできます。もちろん夕方5時以降は仕事はしない、という人もいますが、その分日中は集中して業務に取り組んでいます。
また、成長意欲もとても高いです。Tech大手であれば社内のe-learningの機会も充実してますし、メンバー達は次々と新しいスキルを学んで実務に取り入れていきます。
また、一方で油断していると自分の仕事を他メンバーが学んでしまい、取られてしまうことも起きかねません。これは同業のエンジニアに限りません。
例えば、ハードウェアであればデザイナー、テックリード、メカエンジニア、エレキエンジニア、テストエンジニア、プログラムマネジャー等様々な職種でチームを組んだりします。この時、テストエンジニアの仕事が遅かったりすると、メカエンジニアがその分野をどんどん学んで、テストの仕事をサポートし、しまいにはかなりの部分の仕事を出来るようになってしまったりします。
現状維持ではチームに残れません。常に成長し、チームに少しでも多く貢献する、という姿勢は少なくとも求められます。
5. 英語
日本人のエンジニアにとってここが最も高い壁になるのではないでしょうか。実務で本当に支障なくやるためにはおそらくTOEIC満点でも足りないです。私はTOEICリスニングはほぼ満点490点でしたが、リスニングでとても苦労しているからです。
最低限必要なレベルという意味ではTOEIC 900点後半程度でしょうか。これ以下だと、まともにコミュニケーションが取れません。これ以下でもやれるのは余程専門分野で実力があり、他にかえが効かない人材だと思われている場合に限られると思います。
英語に関しては過去の記事で詳しく解説しています。
6. 学歴/社歴
シリコンバレーのエンジニアという広い括りでは様々な学歴/社歴のかたがいると思いますが、ここでは参考までに私の周り(GAFA)の話をします。対外的にはGAFA各社、学歴は問わないというようなことを謳っているかもしれません。ただ実際、中にいるエンジニアたちは相当に高学歴です。
例えば私の参加したプロジェクトにいたメンバーの学歴は以下のような感じでした。
- テックリード:Stanford
- デザイナー;Carnegie Mellon
- プロジェクトマネジャー:Stanford
- ソフトウェアエンジニア:MIT
- メカエンジニア:UC Barkley
周りの日本人で新卒で入社した人たちはCaltechやMIT卒だったりします。
一方で転職でこちらで働いている方は、学歴よりも前職の会社で見られているようです。多くのエンジニアがその分野でトップの企業から来ていることが多いです。例えばハードウェアの分野だとSonyなどです。
シリコンバレーエンジニア参考例(イメージ)
ここではこれまでに書いた内容をまとめ、具体的なペルソナを作ってみました。周りの実例を組み合わせて創作しています。参考までに。
ケース1) シリコンバレーで働くソフトウェアエンジニア
京都大学で情報工学を専攻、趣味は英語学習でTOEIC900点越え。学部卒業後、MITに進学しコンピュータサイエンスを専攻。学業優秀で修士を修了。卒業後はインターン先でもあったシリコンバレーのTech企業にソフトウェアエンジニアとして採用される。
ケース2) シリコンバレーで働くハードウェアエンジニア
日本の大学で工学部を卒業後、Sony入社。仕事に没頭し、3年目に主力製品のコンポーネント開発プロジェクトリーダーに抜擢。5年目にはプロジェクトを成功させる。外資にヘッドハントされ、日本支社へ。その後、日本での経験と日本語・英語両方でのコミュニケーション能力が評価され、シリコンバレーにある本社へ異動。
シリコンバレーでエンジニアとして働く3つのルート
シリコンバレーでエンジニア職を得るまでのルートはいくつかあると思いますが、その中でも比較的可能性の高いもの3つを挙げます。
- 国内大学・企業 → アメリカの大学・大学院 → シリコンバレー企業就職
- 国内大学・企業 → 外資日本支社 → シリコンバレー本社転勤
- 国内企業 → シリコンバレー企業転職
1. 国内大学・企業 → アメリカの大学・大学院 → シリコンバレー企業就職
最もおすすめかつスタート地点で要求されるスキルが最も低い方法です。ここでは最初のステップとしてアメリカの大学・大学院としていますが、これはアメリカの大学に在籍していればOPTやCPTといった就業許可が得やすいためです。
まず最初のステップとなる海外大学留学に必要となる最低レベルのスキルをかなりざっくりというと、英語でTOEIC 800後半以上、TOEFL iBT 90以上といった感じでしょうか。当然狙う大学のレベルにもよりますし、大学か大学院か、でも変わってきます。専門分野に要求されるレベルとしては国内上位大学・大学院でしっかりと研究できていて、すでに大学院であれば論文を出せている、といった感じでしょうか。
海外大学・大学院から現地採用される際のスキルはそれよりも高くなり、英語のレベルはTOEIC900後半、TOEFL iBT 100以上、またその専門分野で評判のよい大学院を出ていること、といった感じです。
この方法の難点は時間とコストがそれなりにかかる点です。私の場合は大学院留学をしましたが、留学準備に2年程度、また留学そのものに2年かかりました。コストについては生活費、学費を合わせて少なくとも2000万円ほどはかかっていたと思います。
2. 国内大学・企業 → 外資日本支社 → シリコンバレー本社転勤
一つ目の方法の次に可能性があるかな、と個人的に思っている方法です。
この方法での利点は外資日本支社に在籍している限り、常に本社転勤を狙える点にあります。特に会社を辞めたりする必要がなく、必要となるコストもないのでリスクは低いです。
難点はシリコンバレーに本社を持っている会社の日本支社に就職するのが困難という点でしょうか。例えばGoogle 日本法人や Apple Japanにはそもそも入社するのが相当難しいことが想像されます。
しかしながら、VISAの観点から、日本の大学・企業から直接シリコンバレーの本社を狙うよりは現実的かと思います。
3. 国内企業 → シリコンバレー企業転職
私個人的には最も必要となるスキルが高く難しいと思う方法です。
海外の企業が日本の会社から直接、人材をとるというのは、よほどのスキルがその人にある場合を除いてほぼない、といってよいでしょう。これは通常、日本で働いている人をアメリカの企業が採用する場合、企業側にVISAをサポートする負担が生じるからです。同一レベルの人材が現地にいる場合、日本で働いている人をわざわざ採用するメリットはありません。
ですのでこの方法で採用されるには、その分野で際立ったスキル及び経験が要求されます。例えば、その業界で名前が知られているとか、業界トップの企業で活躍した実績・経験がある場合などです。ハードウェアの業界で言えば、SonyやCanonといった企業のイメージセンサやレンズ関連の技術は、世界的にも競争力があると考えられており、そこで活躍できる技術者と同等レベルのスキル・経験があれば、VISAをサポートしてでも採用したいと考える海外の企業はあるでしょう。
シリコンバレーでエンジニアになるためのお勧めのルート
おすすめの方法は上記の1つ目のやり方を少しアレンジした方法で、海外留学→インターン→本採用というものです。”日本から直接採用”に比べて、遥かにハードルが低いと思います。
“海外留学→インターン→本採用”を勧める理由は以下の3つです。
- 労働許可の取得が比較的容易
- インターン中に能力、経験をアピールできる
- 英語力を鍛える準備期間がある
アメリカ大学在籍→インターンであれば労働許可が取りやすい
アメリカの企業が海外(アメリカからみた日本)から本採用でとる場合、企業側はVISAのサポートをする必要が出てきます。このプロセスに時間とお金がかかります。その分、企業側は採用に慎重になります。
一方で、アメリカの大学に在籍している学生をインターンとして採用する場合、CPTという仕組みを利用することにより、比較的容易に労働許可を得ることができます。また、インターンであれば期間限定ですので、その分企業は採用に踏み切りやすい環境と言えます。
また、卒業後もOPTという制度を使い1~3年間の労働許可を得ることが可能です。その間にH-1Bやその他の労働VISAを得る、というのがよくあるパターンです。
インターン中にスキルをアピール
現在働いている方を採用するとなると、当然ですが、試しに働いてもらう、といったことはできません。書類選考や面接で能力、経験をアピールすることになります。
一方で、インターン中には社内のメンバーと共に仕事をするわけですから、仕事で結果を出すことにより、面接や書類選考よりもはるかに説得力のあるアピールが可能です。
留学中に英語を鍛える
日本で働いている方は英語に触れる機会も限られていることが多いと思うので、英語力がネックになりやすいです。
留学する場合であれば、インターンまでには海外留学を少なくと1年ほど経験していることになるので、ある程度英語の環境に慣れている分、有利でしょう。
シリコンバレーでエンジニアをめざす上でのリスク
私は日本で工学修士を取り、国内の製造メーカーに就職しました。いつか海外で働いてみたいという想いがあったので海外駐在のポジションを目指していましたが、なかなかチャンスがありませんでした。このままではまずい、とにかく日本を出なければ、という想いにかられ海外留学することにしました。
言うまでもなく社会人になってから留学することにはそれなりにリスクが伴います。企業派遣で留学が出来れば別ですが、そうでなければ会社を辞めて自費で行くことになります。収入は無くなる一方で、支出は増えます。学費はアメリカであれば年500万円ぐらいかかります。また、卒業後、就職できる保証もありません。
私自身は、あまり深く考えることなく会社を辞めてしまいましたが、上述した内容をリスクだと感じる方は会社を辞める前にはしっかり考えましょう。
実際にやってみた→シリコンバレーでエンジニアになれた
私は実際にこのルートでシリコンバレーでエンジニアとしての職を獲得できました。アメリカに留学をして、そのままアメリカで職を得られるかどうかは、インターンを取れるかどうかにかかっていると感じています。
成功の鍵はインターンの獲得
私自身も、まずはアメリカの大学に留学し、そこで勉強しながら、インターンのオファーを獲得しました。インターン先の企業には一回の面接でインターンのオファーを出してもらいました。その会社は通常の採用ではチームメンバー全員との面接を行い、誰も異論がない場合にのみオファーを出すとか。VISAのサポートが必要でしかも片言の英語を話す日本人がそれら本採用のプロセスを突破するのは不可能に近いです。
インターンから本採用は根性
インターンから本採用を狙う場合であれば、短期ではありますが仕事の成果で評価されますから、ある程度は根性でなんとかなります。私もインターン中はかなり苦労しましたが、とにかく期限通りに成果を出すことに集中しました。
時間、お金はかかります
正直、このルートは時間がかかります。お金もかかります。私は留学準備から数えるとシリコンバレーで働き始めるまでに4年ぐらいかかりました。資金も学費や生活費諸々で2~3000万円ほど必要になりました。現在社会人の方で時間もお金も余裕がない、という方は直接採用も当然アリだと思います。
やってみてよかったです
実際にやってみましたが、いろいろな経験もすることができましたし、運もかなりよかったと思いますが、私はこのルートでシリコンバレーでエンジニアの職を得ることができました。このルートは現在シリコンバレーでエンジニアとして働きたい方の一つの選択肢にはなるのかなと、思います。もし、海外留学そのものにも興味があり、スキルをもっと伸ばしたい社会人の方、もしくはまだ学生の方には特におすすめします。
まとめ
いかがだったでしょうか。シリコンバレーのエンジニアのイメージが湧いたでしょうか。今回書いた内容は、私の経験をもとに書いていますので、かなり偏りがあるかとは思いますが、少なくとも一つのケースとして参考にして頂ければ嬉しいです。
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また、英語についての記事も書いています。気になる方はぜひ。
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